高校の頃の軽音楽部の顧問の先生は素晴らしい人だった。特定されるかもしれないので詳しくは言わないが、若い頃コーラスユニットの一員としてTVに出演していたくらいには有名人だったし、音楽への造詣も深かった。落ち着いていてどこか厳格な雰囲気もあった一方でよく生徒と談笑していたり、私が練習で上手くいかなかった時は励ましてくれた。演奏に関するアドバイスやおすすめの曲を記載したプリントをよく配ってくれるくらいには熱心だったし、軽音楽部の顧問としては完璧だったと思う。
が、今回の話題は「果たして彼は本当に良い顧問だったのだろうか?」についてである。
確かに彼は「軽音楽部」の顧問としては非の打ち所がなかった。優秀な顧問だったと思う。がしかし、我々にとって優秀な顧問だったかと言われると首を縦に振りづらい。
我々はハッキリ言って運動は出来ないけれど青春っぽいことがしたい陰キャの集まりであり、陽キャの真似事をしたくてなんとなく群れてスカしたユーモアを披露したりするも、実際陽キャではないので距離感やノリの程度や加減がわからない為ユーモアはビックリする程つまらないのに体を張る気骨も無いし、群れるとノリの合わない人間を排除しようとする排他的な空気を漂わせていた。
だから表向きでは最悪大声を出しとけばウケると思い込んでいるつまらないユーモアでヘラヘラし、裏ではハブりあい、陰口の叩き合いが横行している最悪の部活だった。
演奏は上手かったかと言われると、ごく数名上手い者がいたが他大半は大したことがなかった。卒業してから下の代が大きな大会に度々出ているのを知り、ほとんど大会に出ず身内でゴチャゴチャしていた自分達はなんだったのかと思ったのを覚えている。
もうお分かりだと思うが、私はこの部活が大嫌いだった。
少し部活についての話が膨らんでしまったが、何が言いたいかというとあの顧問の先生は我々のレベルと合っていなかったのだ。音楽の技能に関しても、人間性においても。
2個上の代がトラブルで大勢辞めた反省として入部前に半ば脅すような顧問口調で「軽音楽部はバンド単位で活動するから軽率に辞めると迷惑がかかる、だから辞めるな」と入部希望者全員に言っていたりと部員のことを気にかけていたが、基本的に放任主義というか、部活には度々顔を出すが部員達への過度な干渉は避けていたし、生徒を叱る際も音楽に関することでしかほとんど叱ることがなかった。
だが私は、もっと音楽以前に人間性についての指導をして欲しかった。ハッキリ言って音作りがどうとか学内ライブの段取りがどうのとかじゃなくて徒党を組んで陰口を叩き合うなとか気に入らない部員をいじめるなとかそういう事を叱って欲しかった。気に入らない者が掛け持ちしようとしていたのを圧力をかけて阻止したり、部内を仕切ってる奴が都合のいいように陰で根回ししたバンド決めに対して「おっ、今年はすんなり決まったな」じゃなくて「そういう決め方はキモいですよ」って言って欲しかった。こんな部活に嫌気がさして部活に行かなくなった私を陰で心配するんじゃなくて声をかけて欲しかった。
多分、もっとリテラシーがあって音楽活動に積極的な人の集まりだったらピッタリな顧問だったと思う。しかし我々の顧問をやるにしては善性を信じすぎだったと思っている。お世話になった先生だしあまり厳しい事は言いたく無いが、ハッキリ言って気にかけていたとか気づいていたとかって、行動に移さないと何にもならないのである。不毛で独り善がりである。
私は人間関係で「距離感」を重んじる「距離感信者」だが、それで言えばこれは距離を取りすぎた例になる。
だが別に私は彼を恨んでなどいない。本当に素晴らしい顧問だったと思っている上で、でも完璧では無いところもあったと言っているまでである。実際彼が異動になった時は悲しかった。泣かなかったし送別会はいの一番に帰ったが。
今頃先生は何をしているのだろうか?どこか知らない高校でまた軽音楽を教えているのだろうか?また会いたいかと言われると、今更話すこともないので答えはNOだが、それはそれとして切実に元気でいて欲しいと思う。
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